浜再起 道のり険しく 前網浜 河北新報(2013.3.2)
石巻市前網浜について、河北新報第一面トップで記事掲載しています。
記事紹介します。
東日本大震災2年
漁港沈下 進まぬ復旧
●ホヤ種苗成長
金づちと貝殻がぶつかる音が、なぎの海に響く。
ホヤ養殖をなりわいにする漁業者にとって、再起の「つき音」だ。
2月25日朝、牡鹿半島東部の石巻前網浜。
沖合数百メートルにホヤの養殖いかだが浮かぶ。
そばで作業するのは前網漁業生産組合の定置網船「オリエント丸」。
クレーンでいかだを引き上げると、半年前は豆粒大だったホヤの種苗が一口大まで成長していた。
金づちを握った組合員たち。
ホヤにこびりついたフジツボやムール貝をたたき、そぎ落とす。
「こうしねえと、ホヤにも栄養がいかねえのさ」。
鈴木信男組合長が言う。順調に育っている種苗に、漁師たちの目が輝く。
●定置網で収入
前網浜を含む半島東部は「裏浜」と呼ばれ、東日本大震災前は日本一のホヤ生産地だった。
生産量は前網浜だけで年間70~80トン。生活していた23世帯全てが漁業で生計を立ててた。
震災の大津波は、そんな小さな集落から全てを奪った。
ホヤの養殖いかだも漁船も。
逆境に挑んだのは、30~70代の8人。
2011年12月に生産組合を設立した。
昨年8月にはホヤ養殖再開できたが、出荷まで3年程度かかる。
それまでの収入源として見いだしたのが定置網だった。
国の補助を活用して約8000万円の定置網船を買い上げ、昨年10月に漁を再開した。
再開への船出は、決して順風満帆ではない。
組合代表の鈴木喜彦さんが強く望むのは漁港の復旧だ。
前網漁港は震災で1メートル以上の地盤沈下。
管理する石巻市は100メートルの岸壁のうち30メートルを仮設工事でかさ上げしたが、
残りは手付かずのままだ。
オリエント丸は全長約20メートル。別の船が接岸中は沖で待機を強いられる。
「これでは満足に水揚げができねえ」
喜彦さんはため息をつく。
市に復旧を要望しても返答は「業者がいない」。
前網漁港の復旧工事入札は昨年8月と10月の2回とも中止だった。
●汚染忍び寄る
福島第一原発事故に伴う放射能汚染も忍び寄る。
定置網に掛かったマダラ、スズキは国の出荷停止を受けた。
(マダラは1月解除)
東京電力に賠償申請する予定だが、風評被害に神経をとがらせる。
「こっから本番だけど、どう転ぶかーー」と喜彦さん。
浜を包む希望と不安。
この2年間は対照的な二つの感情がめまぐるしく入れ替わる日々だった。
養殖いかだでの作業を終えたオリエント丸が浜に戻ってきた。
メンバーがテント小屋で冷えた体を温める。
ホヤの成長ぶりに手応えを感じたのか、みんな笑顔だ。
鈴木組合長は海を見詰めながら、ホヤの出荷が見込まれる来年夏に思いをはせる。
漁業を諦めれば集落はなくなる。
道のりは相当険しいが、踏ん張るしかねえんだ」。
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